お姫様は海に恋い焦がれる
第1章 壊れてゆく運命を、リボンで
ああ、そうだ。分かっていたのか。
ネプチューンは、セレニティの無邪気な色に遮覆された聡明な心魂を垣間見る。
嘘も誤魔化しも通用しない。
プリンセスを守護する戦士が、主の瞳にどれだけ美しいものだけを許していようと尽力しても、彼女はそれを許さないのだ。感じやすくさばかり繊細、美しいもの甘いものを格段に愛するプリンセスは、それでいて少女らしからぬ強さを持ち合わせている。
「プリンセス。……」
行かないで、とは、ぐずってくれない。セレニティはネプチューンを引きとめてはくれない。
それがシルバーミレニアムの姫君としての分別だからだ。
だが、とても悲しんではくれる。同じパレスで暮らせなくなるだろう未来を嘆いて、愛らしい顔を歪めてはくれる。
「──……」
ネプチューンとセレニティの指先が、可憐なリボンをもてあそぶ。十本の指の隙間をほつれるパステルピンク、それは、まるで予測不可能な未来の螺旋のようでもあった。