お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
「わぁ!綺麗な音楽!」
「お団子っ、お手洗い行きてぇ!」
「むむ?!ヴァイオリ──…」
「お団子っ、向こうに苺大福売ってるぞ!」
「あのピアノ、はるかさんの弾くのに似──…」
「お団子、ここ寒いな!」…………
はるかの案は、名案だった。
だが、二人がイントロを奏で始めたところで、星野はうさぎを連れてゆく。これでは即興で書き下ろしたオリジナル曲も無駄になる。
つまり核心に迫れないのだ。
「メシアよ……これが僕達に与え給うた、報いなのか……」
「はるか、そのセリフ好きよね」
もっとも、ギャラリーを無下にしてうさぎを追いかけるわけにはいかない。
みちるははるかと、行く先々で、一曲は披露しきっていた。
『et◯rnal ete◯nity』──…恋人達の宿命的な出逢い、再会。そして久遠の愛をテーマにしたそれは、ギャラリー達を号泣の嵐に引きずり込んだ。
みちるとしては、歌い飽きてきた頃だが。
「こんなに歌っても……プリンセスには届かない……」
「僕達の声に気付いてよ……プリンセス……」
ヴァイオリンと持ち運び式ピアノを後部座席に乗せて演奏し回るみちるとはるかのテンションは、スリーライツのものまねが出来るまでに上がりつつあった。