お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
「二人とも焦れったい!」
みちる達が何度目かの『et◯rnal ete◯nity』を披露し始めると、前列にいた客の一人が特設ステージに上がり込んだ。
一瞬、うさぎと見紛うた。
青い瞳に長い金髪、そして十番高校の制服──…それだけでうさぎに見えるとは、みちるも相当参っているのか。
否、疲労だけから見紛うたわけではあるまい。
愛野美奈子。彼女は、かつてプリンセス・セレニティの影武者だった。
「はるかさん。特にみちるさん!」
みちるとはるかの演奏の手は、止まっていた。
美奈子がスタンドマイクを握った。びしっ、と、みちるをねめつける。
「まだうさぎちゃんをものにしていないんですか?!」
「っ、何故……」
「うさぎちゃんが何のために衛さんとお別れしたのか、少しは考えてあげて下さい!」
「美奈子ちゃん、それはつまり……」
「ここは私が歌っておきます」
「…………」
「お二人はうさぎちゃんを追いかけて下さい!」
みちるは美奈子に気圧されて、ステージを下りた。
はるかもピアノを抱えて車へ急ぐ。
「…………」
「やれやれ、彼女には敵わないな」
「ええ、すごいわ」
みちるはディープアクアミラーを覗き、うさぎ達の次なる目的地を割り出していた。
夜陰に紛れた特設ステージでは、アイドル志望の少女のライブが始まっていた。
「あの子……『革命は◯イト&デイ』を一人で歌い分けている……」
「歌わなくても良かったんだが……律儀だ……」