お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
* * *
星野は遊園地を貸し切って、バースデー仕様に仕立てていた。
遊園地の正門には『月野うさぎ生誕祭』の看板が掲げられ、パーク内にはスリーライツのナンバー、そして世界各国から集められたバースデーソングがローテーションで流れている。
観覧車にはウサギや花のイルミネーションによる装飾がなされ、メリーゴーランドの馬車にもたくさんのぬいぐるみが置かれていた。
「星野すごーい!こんなお誕生日初めて!皆も呼べば良かったな」
「呼べよ。あいつら、お団子の帰りがあんまり遅いと痺れ切らすぜ」
「良いの?」
「ああ、ただし──…」
星野がうさぎを抱き寄せた。
わざとらしいまでに誘惑的な唇が、無垢な耳殻にささめきかける。
オレと二人っきりで、メリーゴーランドに乗ってからな。
「っ……、星野……」
「──……」
みちるははるかと物陰から二人を見ていた。
うさぎに好きだと伝えて三ヶ月が経つ。
少し時間が欲しい。そう言って、うさぎは返事を保留した。
うさぎの衛との破局が分かった時、みちるの胸は僅かに顫えた。
だが、その顫えはまもなく喪失感に変わっていった。星野らが地球に降りてからも、ほぼ三ヶ月だ。この間で、うさぎと星野の距離が縮まってのは明白だ。うさぎは星野のために衛を見限ったのかも知れない。星野のために、みちるの告白を流したのかも知れない。
「…………」
それでも、たとえうさぎがみちるに振り向かなくても、みちるにはうさぎを守る使命がある。
キンモク星という正体不明の異星から訪った戦士。それが星野の正体だ。安心してうさぎは任せられない。