お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
「星野、……」
「おぉあっ?!!」
みちるはうさぎと星野の間に割って入った。
「うさぎ!」
「えっ?!」
星野が倒れ込んだその隙に、みちるはうさぎを観覧車に押し込めた。
「うさぎは私がいただくわ」
「はっ、はい!」
スタッフがすぐさま観覧車の扉を閉めた。
みちるとうさぎを乗せたゴンドラが、イルミネーションの空へ昇ってゆく。…………
ロマンチックなオルゴール曲が、極上の景観をいやが上にも盛り上げる。
薄ら明かりの中にいるのは、月をなくした宇宙の中で、まことにその輝きを放つプリンセスだ。
みちるはうさぎと向かい合っていた。向かい合いながら、今更になって、昼間の衛の気持ちを痛感していた。
胸が落ち着かない。身体が顫える。泣きそうになる。
全くの赤の他人であれば、月野うさぎという個人と、どこにでもいる少女らとの間のどこに相違があるのか訝しがろうが、いかにしても彼女は特別だ。
星野がうさぎをさんざっぱら連れ回し、そのくせ彼自身の想いは露ほども彼女に伝えられなかった心境も、今のみちるには十分すぎるほど理解出来た。