お姫様は海に恋い焦がれる
第4章 生誕祭!うさぎ争奪戦
「…………」
「あの、みちるさん」
「なぁに」
「この間の、返事……。聞いてくれますか」
うさぎが語り出す。甘ったるいソプラノで、その口調は相変わらず無邪気だ。
うさぎほど神妙な顔の似合わない少女はいない。
何も考えないで何に気を病むこともしないで、うさぎにはぬくぬくと生きていて欲しい。それがみちるやはるか、その他仲間達の切なる願いだ。
だから、うさぎが真剣に何かに向き合う姿は似合わない。
そうみちるは、うさぎが思いつめるのを認めたくなかった。
だが違う。
うさぎは愛に満ち満ちている。満ち満ちた愛を十倍にも百倍にもして返そうとする。彼女自身を犠牲にしてでも、その対象が、受けとめられなくなるまでの大きな深さで。
「みちるさんのこと、あたしも好きです。信じてもらえないかも知れませんけど、ずっと……」
プリンセスであった頃は遠く離れていたけれど、もっとたくさん話したかった。
転生してからもはるかさんに遠慮して、なかなか話せなかったけれど、みちるさんのことばかりを見ていた。
まもちゃんを傷つけてまで幸せになるのが怖くて、自分の気持ちに向き合えなかった。…………