とかして。
第1章 光が世界を染め変える
「こらぁっ、弱い者いじめはやめなさーい!」
「んだとこのヤロー」
みちるがうさぎを追った先に、今しがたの声の主の姿はあった。
男子学生を恐喝していたのは、見るからにぼうぞくな少年達だ。
歳のほどはみちる達とさして変わらなかろう。少年達は四人いた。だらしなく伸ばした髪を奇抜に染めて、耳はもちろん、鼻や口まで金属で飾り立てている。
少年達から注意の逸れた男子学生とは百八十度違う、うさぎの毅然とした眼差しは、彼らをしかと見据えていた。
「へぇぇ……ガキじゃん」
「彼を逃がしてあげなさい」
「だったらテメェが金出すのかこらぁ」
「うさっ──…」
眩暈がみちるを襲った。学生の一人の乱暴な手が、うさぎのセーラーカラーを掴み上げたのだ。
これ以上は見たくない。
だが、みちるは変身している時でさえ、三日前の怪我が障って新たに不覚を重ねたのだ。出ていったところで、少年達を追い払える見込みはない。
通信機を握り締めた、その時だ。
「まぁまぁ、不良さん達。焦らない焦らなーい」
朗らかなうさぎの声が、みちるの焦燥を狂わせた。
前方を見ると、それまで威嚇していた少年達も、少女を囲って唖然としている。
「困ってるなら何とかしたいけどさ、とりあえず、その男の子……帰してあげよ?」
「──……」
「…………」
「あ、それから、さっきは怒鳴っちゃってごめんね」
「…………」
少年達が拍子を抜かしたのは明白だ。
覚えていろ。それだけを吐き捨てて去っていった彼らの中に、心なしか頰を染めている者もあった。