とかして。
第1章 光が世界を染め変える
みちるはうさぎに駆け寄った。
うさぎは腰を抜かせていた。そうしながらも、礼を繰り返す少年を見上げて笑いながら、元気出して、と、ポケットからキャンディを一つ分けてやる。ウサギの絵がプリントされたキャンディだ。
「大事な人にもらったの。だけど美味しいから、貴方にも食べてみて欲しいんだ」
「…………」
名前も知らないみちるの怪我の手当てをして、名前も知らない少年のために、危険を顧みないで飛び出す。
うさぎは、そうしたことを自然に行動に移すのだ。偽善行為を働いている自覚さえない。
「うさぎ……」
みちるはその場に崩れ落ちた。目線の合った少女の身体を抱き締めた。
震えが止まらない。
この美しい顔が壊されていたら、この美しい精神を宿した身体が痛めつけられていたら、みちるは悔いても悔いきれなかった。
みちるは、みちる自身の恐慌を慰めるために、うさぎを強く抱き締めていた。