とかして。
第2章 有料なら、受け取るってことだよね?
あたし達は、痺れを切らせた。
「お前はすっこんでろ」
結界内に飛び込むと、案の定、さやかは苦戦していた。
生傷が絶えない状態だ。さやかは、極めて露出の高い魔法少女服がことごとく強調する嬋娟な身体を惜しみもしないで、性懲りもなく魔女に挑む。
例のごとく優良な生まれ育ちを絵に描いたようなピンク頭は震えて、挙げ句、泣き出した。
あたしの加勢を拒んださやかは、目も当てられない戦いぶりだ。
それは、要領に長けたあたし自身にも、どういうわけか重なった。
禍々しいまでの赤が、黒い結界に吹き散った。
にわかに例の危険な衝動が、あたしを襲った。
だが、愛されるべくしてぬくぬくと生き、まごころに潤ったようなピンク頭は、あたしにまでその牽制を作用させた。
「さやかちゃん!さやかちゃん……っ」
親友に抱かれたさやかは、あたしのリンゴは受け取らなかったくせに、グリーフシードを投げて寄越した。
温室育ちの二輪の花が帰路に着くや、あたしは震え、嗚咽した。
不可解な涙は堰が切れたようにして、胸の奥を湧いて出る。
家族が心中した夜でさえ、泣くことを諦念していたのに。
「何でなんだよ!何でっ…………!あたしはあんたが──……力も命も、自分のために使うもんだろ……っっ」
「杏子?」
相棒が、珍しいものでも見る目であたしを見下ろしていた。
「ぐすっ……うゔ……」
泣いても、肝心のさやかは帰ったあとだ。何一つとして伝わらない。それでもあたしは聞き分けのない子供のように、やり場のない忿怒を吐き出す。さもなくば正気を保てなくなろう。
ソウルジェムが濁りきった時のペナルティは知らない。
ただ、祈りの副作用とやらで、あれだけの傷も幻覚だったかのように閉じたさやかは、変身をといても消耗していた。
「お前危ねぇくせにっ……あたしより、これはあんたの方が必要なくせに!魔法少女は、魔力がないと…………それをどうして、自分のこと、粗末にすんなよ!!……」