テキストサイズ

とかして。

第2章 有料なら、受け取るってことだよね?


* * *


 あたしは湯冷めを顧みず、ホテルを抜けた。


 部屋では、今頃、さやかがシャワーを浴びている。





『貴女は…………何て愚かなの……』

 公衆電話の受話器の向こうで、ほむらはあたしを罵った。

「仕方ないだろ。だったら何さ、金で買えって言えば良かった?」

『まだ賢明ね』

「冗談じゃない。あの潔癖のことだ、今度はあたしを押し売りセールスマン呼ばわりしていたろうよ。…………ねぇ、それでさ、どうすりゃ良い?」

『美樹さやかはシャワーを浴びているのよね?さっさとこの電話を切って、貴女は彼女のソウルジェムを探してグリーフシードを──…』

「そうじゃねぇ!」


 あたしの声は、あたしの意思を足蹴にして上ずった。


 心臓が、どうかしている。一言一言を発する度に、脹脛にでも喩えるならば、腓返りを起こしそうだ。


「あ、あたしが訊いてるのは……」


 何度も言わせるな。


「その…………セッ………く……す……って、どうやんの?」

「…………」


 ダメだ。

 さやかの姿が脳裏に浮かんで、今度こそ、頭がのぼせた。


 あたしは銀白色にさらわれかける意識を奮い立たせて、受話器を握った右手を力む。


『いい加減にしてよ!何度言わせるのっ…………貴女はさっさとこの電話を切って──…』



 ほむらも知らないのかも知れない。


 あたしは、受話器を戻した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ