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とかして。

第2章 有料なら、受け取るってことだよね?






 あたしはさやかを掴み寄せた。

 駅でと同様、折れそうに細い手首をぞんざいに握って、今やあたし自身も必要性を疑っている、先輩としての貫禄を必死に取り繕って。


 バスタオルと肉叢が、もしかしなくてもその頂をほのかに描き出した丘陵の麓で僅かな釁隙を生んでいた。これでは裸体も同然だ。滑らかな肩に明るい鎖骨、秘めやかな腕の付け根は触れれば破けそうに薄い肉が這い、市民プールなどへ行けば誰もが晒しているところでも、それがさやかのものというだけで、どうしようもない背徳感があたしを苛む。

 おざなりにももったいつかせた肉体は、柔らかだった。
 触れなくても分かる。肉感的というほどではない、それでいてあたし達の世代で比較したなら、抜きん出て熟れている。


 本人が死守するどころか崇められても足りないくらいだ。



 あたしは、こうも尊いものを、たかがグリーフシードと引き替えにしろと言い出したのだ。…………



「い、いのか」


 まずい。公衆電話にいた時以上に、声が浮つく。


「…………良いよ。あんたの好きにして」

「意味、分かって言ってるわけ?」

「シャワー浴びてる時、考えたんだよね。あんたも同じだったのかなって。まどかは優しすぎるから、一緒にいてくれてたけど。あたしにそんな資格はなかったし、あんたも……、一人だったのかなって」

「…………」

「あんたこそ、良いの?」

「…………」



 あたしはさやかのソウルジェムを浄化した。

 やっと、本人の許可もとって。



「そんな身体じゃ、抱いても味気ないし」

「うん。……」


 綺麗な青だ。月の色を吸った海。無限のぬくもりを抱いた海。


 さやかのソウルジェムに魅入ったあと、あたしは気を取り直して振り向いた。


 彼女は、もっと綺麗だ。顔色も見違えている。



 やはりあたし達は脱け殻だ。

 ソウルジェムの穢れを除いただけで、媒体はこうも生気に溢れるというのか。

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