とかして。
第2章 有料なら、受け取るってことだよね?
「き……」
(あー!!キスするぞって、何で言えないんだあたし!)
あたしはさやかを抱き寄せた。
指先が、柔らかな腕の質感に怯え、覚束ないあたしの視界はさやかとの距離を失い、不意に胸と胸とが触れた。
「わっ悪い!」
「なーに慌ててんの、可愛いやつ」
「…………」
…──肉体以外まで回復してる?
さやかの指が、あたしの額を小突いた。
その笑顔は屈託ない。少し前、まどかとやらに向けられていた、さやかの素顔だ。
「…………」
「き、キス、するよ」
「どうぞ。助けてくれた王子様には、めいっぱいお礼しちゃいますよー」
「ほんとにっ、ほんとに……コウカイシテモ オソイ カラナ!」
「っっ……?!」
しまった。後悔しても、時、既に遅し。
それはあたしの方だった。
あたしの喉から、今度こそ変な声が飛び出したのだ。
居心地悪い数秒が、さやかとあたしの沈黙を刻む。
さやかは、あたしを見つめていた。
出逢ったあの日と変わらない、日の当たらない場所には浮いていた、清冽で、可憐な大きな目で。
「ぷ」
「~~~~~!!」
「あははははっ、声裏返ってんの!あんたそういうキャラだっけ。いやー、これは面白いわ」
「あ、あんたなぁ……!」
さやかは、豪快にあたしを笑った。遠慮の欠片も労りもない。