とかして。
第2章 有料なら、受け取るってことだよね?
「杏子、……」
「何、可愛い顔して」
「血、出ちゃう」
「あんたが言ってた死ぬよりましだよ」
「……あんた、血、苦手じゃん。……」
「──……」
血の気が引いた。
あたしはさやかのこういうところが憎い。
他人のことばかりを考えて、醜いヤツに、その醜さを突きつける。さやかが綺麗であればあるほど、鏡に映した昔のあたしのような彼女は、今のあたしをおとしめる。
「へぇ……あたしの心配してくれるほど、余裕あるんだ」
「──……」
「そうだよ。あたしは狂う。あんただってイカれてる。受けとめてくれる気があって、付いてきたんだろ?」
鉄錆の匂い、とりわけさやかのそれを嗅ぐと、あたしは理性を狂わせる。
父さんに、母さんに、妹。
たった一人きりになった夜。誰もがあたしを否定した夜。あたしが、生に失望した夜。
あの夜の残像を振り払わんと、あたしは忘我して槍を振るった。思考する暇もなくすほど、血の気に駆られて。
「っっ!!……」
あたしは性具を肉壺に埋めた。
「五センチってとこかな。痛くて声も出なかった?」
「はぁっ、……きょう、こ……」
「ね、狭いんだけど。痛覚は繋げといてね。あたしも予備はそんなにないし」
くに……くにくに…………
事足りているようで、常にぎりぎりのグリーフシード。
あたしは貴重な魔女の卵を、また、海の深淵にあてがった。
「ああああっっっ……!!」
音声と呼べない叫喚が、さやかの喉を突き上げた。