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第10章 拉致

「ライブ最高だったねぇ♪」

リツが冷めやらぬ興奮をあたしに叩きつけてきた。バシバシと叩かれ続けた肩がいつものように痛んだ。会場が空いてくるまであたし達は席に暫く座っていたが、混雑も減りあたし達は会場を出た。

「あ…ちょっと待ててあたしトイレに行ってくる。」

ロビーへ出るとリツがトイレへと向かった。

「ねぇ…君一人?」

突然、声を掛けられた。

「友人を待ってるんです。」

あたしは慌ててリツにメッセージを送った。

(ロビーで2人組に声掛けられちゃったの。)

…嫌だ。こんなところで。

見るとスタッフのジャケットを着た2人組の男性だった。

「君いくつ?」

スタッフが持つような無線を腰に付けていた。

「16…です。」

2人とも20歳前後に見えた。

「わっ…高校生か。」

男達は、顔を見合わせた。

「これから、スタッフの打ち上げがあるんだけど、一
緒に僕たちと来ない?」

「えっ…でも…。」

時計を見ると9時を少し回ったところだった。終わった後に、リツと一緒にファミレスでご飯を食べる約束をしていて、ダディがそこにお迎えに来てくれることになっていた。

「僕、ユウヤの付き人してるんだけど、君たちを連れて来てって言われたんだ。」

ひょろりとした長身の男が言った。

「でも…友達が来るんで…。」

「じゃぁさ、友達に連絡しときなよ。ここの近くの●●ホテルの106号室だからさ。他にも女の子が来るんだ。だから、合流すれば良いじゃない。」

「俺たち君を連れて行かないと叱られちゃうんだよね。だからお願いっ!!」

もうひとりの黒縁眼鏡を掛けた真面目そうな男が言った。

「そうだ顔を出すだけで良いよ。そしたら、俺たちも叱られないし、君は友人が来たらすぐに帰れば良いじゃない…ねっそうしよう。」

あたしが、リツにメールを打っていると背中を押される様にして玄関へと向かった。ホテルは道を挟んで真正面にあった。

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