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第10章 拉致

「ごめ~ん。華…ストッキングが伝線しちゃっ…て。」

リツはトイレから出てくると、あたしを探した。ライブが終わってから随分時間が経っていたので、人は殆ど残っておらず、スタッフが片付けを始めていた。同じように誰かを待っている女の子がスマホをいじっているだけだった。

「華ぁ!?」

リツは大きな声を出した。

「あ…さっきの子?ちっちゃくてかわいい子でしょう?スタッフに連れていかれたよ?」

「えっ…。」

リツは慌ててロビーに出ると、守衛に聞いた。

「ああ…スタッフに連れて行かれて、向かいのホテルに今さっき行ったよ。おかしいね…今日は地方公演でも無いからスタッフもホテルを使う事なんて無いと思ってたのに。」

守衛が呟いたのを聞いてリツは何気なくスマホを見ると、華からのメールが入っていた。

「あのっ!済みません駄目かも知れないけど、確認して貰えます?!プロトのマネージャーでも、メンバーでも良いんです。」

「そんなこと言ったってねぇ…ファンは取り次がないように言われてるんだよ。」

守衛はまたかといった風にリツをあしらった。

…こんなことしょっちゅうあるんだろうな。

リツはそれでも諦めなかった。

「今日打ち上げがあるかどうかだけでも…友人が向かいのホテルで待ってるって言うんですけど…。」

リツは守衛にスマホを見せた。

「いやぁ~そう言われてもねぇ。」

これでは埒があかないと思いリツはため息をついた。




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