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第12章 悪い子の勧め

あたしが学校へ行くとリツが心配していた。

「華…本当にごめんね…あたしが華を一人にさせたから。」

あたしに抱き付いてリツが泣いた。

「違う…リツは悪くない。あたしが…いけなかったの。」

―――グーッ。

「何…今の?」

あたしのお腹の音だ。

「家族と喧嘩して、朝は何も食べずに出て来ちゃったの。」

――― グーッ。

空がいつものようにバッグとコンビニの袋を下げてやってきた。

「空…おはよう。」

リツが声を掛けると、空は怠そうに手を挙げて挨拶した。あたしは机の上に突っ伏した。

「あー。お腹空いた。購買部で何か買ってこようかなぁ。」

――― グーッ。

あたしのお腹は鳴り続けていた。

「おい。」

空があたしに声を掛けたので顔をあげると、コンビニの袋からゴソゴソとメロンパンを取り出して、あたしに投げた。

「そのままじゃ、お前の腹の音、授業中も煩くて集中出来なさそうだからやるよ。」

あたしは落っことしそうになるのをなんとかキャッチした。

「授業中いっつも寝てる癖に…良く言うよ。」

空は授業中良く寝ている。それでも先生に指されるとちゃんと答えるから、実は寝ているようで寝てないのかも知れないと思った。

「あ…じゃぁメロンパン返せ。」

「一度貰ったものは返しませーん…けど、ありがと。」

あたしは、パンの袋を開けて大きな口で食べた。
あっという間に、昼休みになった。お昼ご飯を買おうと思ったら、財布を家に忘れて来ていたことに気が付いた。

「屋上へ行ってくる~。」

あたしは、リツに行って一人でまだ少し寒い屋上へ行った。

「あーあ。お腹空いたぁ。なんでお財布忘れちゃったんだろ…家に帰るの嫌だなぁ。」

屋上のベンチであたしは寝転がって青い空を見た。

「だっせぇ…昼飯も忘れたのかよ。」

その声にふと見上げると、丁度階段の踊り場の上に設置してある、給水タンクの上から空が笑っていた。

「そんなところにどうやって上ったの?危ないわよ。」

空の姿が見えなくなった。

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