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第12章 悪い子の勧め

「この上結構温かいんだ…転がってると眠くなる。」

あたしは上に上れる場所を探した。丁度屋上の手摺伝いに上れるようなところがあった。あたしはそろそろと手摺を伝い、階段の踊り場の庇を這い上った。

「よ…く…こんなところ…上ったね。」

空がひょいと顔を急に出したのであたしは驚いてバランスを崩しそうになった。

「あわわっ…。」「あぶなっ…。」

滑り落ちそうになったあたしの腕を大きな手がしっかりと掴んだ。

――― ガシッ。

「…いよ。華たれ。」

空がそのまま上にあたしを引き上げてくれた。

「あーっ怖かったぁ。」

「俺の方が焦ったよ…馬鹿。」

鉄でできて居るそこは、太陽の光を浴びて温かかった。

「ホントだ♪ここ温かいねぇ。お昼寝するのに丁度良いかも♪」

「金ねーんだろ?やるよ。」

サンドウィッチとおにぎりを空がくれた。

「いいよ…朝も貰ったし…。」

――― グーッ。

あたしのお腹がなったので、空が笑った。

「俺はもう食べたから…食え。」

空が寝転がる隣で、あたしはおにぎりを食べた。

「親と…なんかあったのか?」

空は、蜂の巣状の雲を眺めながら言った。あたしは黙々と食べていた。

「お前…いっつも母ちゃんの弁当持って来てるだろ?…それに学校休んでたし。」

「うん…パパに酷い事言っちゃったの。それでママにぶたれたの。」

ふたりの間に沈黙が流れた。

「ねぇ。空はパパやママと喧嘩をしたことはある?」
空は笑った。

「父親とはしょっちゅうだよ。」

「そっか…。」

春が近い日差しはぽかぽかと温かかった。

「お前の両親は良い人だと思うよ。」

「でも…パパなんて、いつも駄目駄目ばかり言ってるし、ダディだって、いつまでもあたしを子ども扱いするし。なんか…良い子で居るの疲れちゃったんだよね。」

あたしは大きなため息をついた。

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