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第2章 転校生

----翌日の朝
学校へ来るとリツがすぐにやってきた。

「ほんとにほんとに手に入ったの?」

リツは興奮していた。テレビ露出も少ないし、ライブのチケットは数分で完売…なんてザラだったからだ。

「うん。あたしのおばあちゃんが知り合いの伝手でチケット2枚取ってくれたの。しかも関係者席♪」

リツは自分のほっぺたを抓った。

「夢じゃないよね?ほんとにほんと?」

あたしもカズさんに何度も何度もお礼を言った。これからもチケット貰ってあげるからねと言われて、あたしも同じように嬉しすぎて飛び跳ねたもの。

「うん♪」

リツの気持ちは充分過ぎるほど判った。

「あ…忘れる前に…これありがと。やっぱ凄く良かったぁ。」

Prototypeのインディーズ時代のCDは、プレミアがつくほど貴重だ。結成当時からのファンのリツは全て持っていた。

「あたしこそありがとうだよぉ。関係者席が取れるなんておばあちゃん何者?」

ママは知られることをとっても嫌がるけど、ママの実家はお金持ちだ。おじいちゃんとカズさんは豪邸に住んでいる。

「普通のおばあちゃんだよ。今回はラッキーだっただけ…みたい。」

嘘だ。この間、あたしがカズさんに何気なくPrototypeが好きだと言ったからだ。おばあちゃんに頼むと碌なことが無いとママが言うけど、今回はほんとに感謝だ。

「あんなのの、どこが良いんだよ。」

リツがトイレに行ったのを確認して空が鼻で笑った。

「ボーカルのユウヤ…の声が好きなの。あの1/fの揺らぎを持つベルベット・ボイスが好きなの。」

あたしは、あいつの前にも関わらず、ついウットリとしてしまった。

「ビジュアル系バンドと似たようなもんじゃん。」

空は大きな欠伸をした。

「違うわよ。曲は力強かったり、歌詞に励まされたりするけど、ユウヤの声には憂いや苦悩が含まれる時があるの。」

あたしは、机に肘をついた。

「嬉しそうにしてる”振り”をしているように見えるんだよね。売れてるのに大変なこともあるのかなぁ。」

空は珍しくちゃかしたりせずに、黙ってあたしの話を聞いていた。

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