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第15章 夏休みとそれぞれの想い

「まっ…そうだけどね。」

ひとつずつ部屋を覗く夏に、どの部屋も同じだよと真啓が笑った。

「真啓はどの部屋?」

ピアノルームの隣、あたしの部屋と丁度向かい合わせの部屋を指さした。

「ここだよ。」

真啓がドアを開けてくれた。シンプルだけどとても使いやすそうな部屋だ。

「わっ!凄く大きなベッド。」

幅はキングサイズぐらいだけど、縦に長いベッドだった。

「もうひとりのお父さんが、使っていた部屋だよ。とても大きな人だったから、ベッドもマットレスも特注なんだって。」

カーテンを開けると、眩しい光が部屋いっぱいに挿した。掃除が行き届いているのか、埃がキラキラとほんの少し舞っただけだった。

「真啓のもうひとりのお父さんに会いたかったなぁ。」

真啓は何も言わずテラス窓を開けた。蒸し暑く潮を含んだ風が一気に入って来た。

「海の匂いだ。」

あたしは真啓の隣に並んだ。

「父を知る人は、皆、母をとても愛していた人だったと言ってた。写真では見た事があるけれど、僕が生まれた翌日にガンで亡くなったんだって。」

自分の誕生日の翌日がお父さんの命日だなんて、あたしは何も真啓に言えなかった。

「でも、ここに華ちゃんを連れて来られて良かった。」

「あ…またちゃん付けであたしを呼んだ。」

「いけない…もう癖になってるんだね。」

真啓が笑った。

「おーい!真啓!海に行こうぜ。」

どうやら夏は部屋を決めたらしい。

「華ち…華も行く?」

「う…うん…でも…。」

…泳げないし、水が怖いって言ったら笑われるかな。

「華は、どうせ留守番だろ?」

部屋から出てくると、既に夏は水着に着替えていた。

…夏…張り切り過ぎ。

リツが夏の向かいの部屋から顔を出した。

「華!一緒に行こう♪無理に泳がせたりしないから。ねっお願い。」

…男子ふたりじゃ嫌だよね。

「僕が一緒についてるから大丈夫だよ。」

顔が強張るあたしに、真啓はいつもの優しい笑顔を見せた。

「う…ん判った。」

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