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第16章 カレントが運んだ切ない夜

「なんかキャンプみたいで楽しいね。そう言えばね…昔ね…」

華は、いつものようにおしゃべりを始めた。

…僕は君のことが好きなのに。

こんなに側に居るのに抱き締められない切なさがとても辛く苦しかった。

「…でね…あーっ!ちょっとぉ真啓っ!あたしの話聞いてた?」

華が眉を顰めて僕を見ていた。

「えっ?…あ…ごめん。」

「ほらぁ…やっぱり聞いて無かったんだ。だからね、リツの恋に協力して欲しいの。」

「あ…うん…判ったよ。」

リツと夏はお似合いだと思うんだけどなぁと言いながら物思いに耽っている華の顔を僕はじっと見ていた。

「あっそうだ。真啓に好きな人は居るの?あたし聞いたこと無かった。」

僕はどう答えようか迷った。

「い…る…かな。」

僕は華の反応を見ながら答えた。

「えええええーーーっ!そうなのっ!真啓!!誰?誰?夏には内緒にしとくからねっ。」

華の大きな声が洞窟に響き渡った。

…僕の方が、えーって言いたいよ。華ちゃん。

「あ!判った合唱部の子?チョコレート貰ってたじゃない?小ちゃくて可愛いあの子でしょう?」

華は冗談では無く、わざとでもなく、本当に気が付いていないんだ。華は僕の顔をじっと見ていたが何も言わない僕を見てハッとした顔をした。

「あ!言わないでね…あたし当てるからっ!あっ。ほらあの人あの人だっ。3年生の…野球部のマネージャーの…あーっ。名前が出てこない。」

…夏が言うように、道のりは遠そうだ。

興奮して一生懸命に考える華を眺めていた。

「えっ?違った?…ねぇ…もしかして…先生?」

「違うよ。」

思わず即答し声を出して笑ってしまった。

「…だよね。うん…ちょっと聞いてみただけ。」

考え込んでいる華に聞いてみた。

「華ちゃんに好きな人はいるの?」

「問題はそれなのよっ。あたしは真啓も好きだし、プロトのユウヤも好き…でもそれって恋愛感情じゃ無いのかなぁ。」

…はぁ…馬鹿らしくなってきた。

「うん…それは違うかも…知れないね。」

「ねぇねぇ…好きってどんな感じ?」

…多分、夏が居たらこの辺りで"駄目だコイツ"ってゲラゲラ笑いそうだ。

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