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第18章 花火大会

坂道を下った途中に旅館はあった。こじんまりとしていて、とても落ち着いた雰囲気だった。

「あら♪真啓くん。」

玄関で真啓の知り合いのスタッフのようだった。
その人はちらりとあたしを見たので、こんにちはと頭を下げた。

「この可愛い子が一夜を過ごしたガールフレンドね?」

「いえ…友達です。」

真啓はあたしを見て笑いながら否定した。

「ちょっと待っててね。」

スタッフの女性が、事務所の奥へと入り、話し声が聞こえ、すぐにケンタさんが出て来た。

「真啓と華ちゃん。」

「本当にお世話になりました。これうちの祖母がケンタさんにどうぞって。皆さんで召し上がって下さい。」

あたしは大きな包みに入ったケーキを渡した。

「わざわざありがとう。良かったら温泉入っていくかい?うちのは、少し熱めだけど。」

真啓とあたしは顔を見合わせた。

「勿論、男女別だけどね。」

あたしも真啓も思わず恥ずかしくて俯いた。バスタオルを渡され有無を言わさず案内されてしまった。

「折角だから入って行こう。」

真啓は何度か来たことがあるらしい。

「う…ん。」

大きく男女とかかれた暖簾を別々に入った。脱衣場で、女性が丁度上がって来るところだったのでこんにちはと挨拶をした。日焼け止めをたっぷりと塗っていた筈なのに、うっすらと日に焼けていた。屋内風呂を横切り、露天へと出た。時間が中途半端なせいか、だれも居なかった。
外に出る蝉の鳴き声とちょろちょろと水音が聞こえた。大きな露天風呂は10人ほどでもゆったりは入れそうなぐらい大きかった。

――― くしゅん…くしゅん。

垣根の向こう側でくしゃみが聞こえた。

「真啓?」

あたしは声を掛けた。

「うん。」

あたしは、勇気を持って今朝の出来事を釈明した。

「朝のことだけど…あたし寝ぼけてたみたいで…。」

真啓がクスクスと笑う声が聞こえた。

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