テキストサイズ

+* ゚ ゜゚ *Classmates* ゚ ゜゚ *+

第3章 Prototype

「他のファンにもみくちゃにされて怪我をしたようです。」

黒田は淡々としていた。声に抑揚が無くとても事務的に聞こえた。

「大丈夫?」

あたしの肩にユウヤが触れた。顔が真っ赤になるのが判った。

「ユウヤ…さんっ。あ…握手して下さいっ!」

リツがとても緊張していた。

「ああ…そんなことぐらい。」

そういって握手をした。

「写真とか撮らなくていいの?」

ユウヤの声はとても優しかった。

「ま…マジで?」

リツは素っ頓狂な声をあげた。

「うん。マジで良いよ。」

黒田がリツとユウヤの写真を撮った。ユウヤはしっかりリツの肩を抱いた。

「うわっ。お友達に自慢しちゃう~♪ありがとうございます。」

あたしも目を開けたかったけど、静かにふたりの会話を聞いていた。

…やっぱり声も素敵だ。



付き人が、ユウヤに水とタオルを持ってきた。

「君たち…名前は?」

ありがとうと言って受け取りながら聞いた。

「あたしは岩田利津です。この子は 今泉華です。」

「あれっ?君たちファンレターくれた?」

「えっ…読んでくれたんですか?」

「ああ…最前列にいたよね?」

「はっ…はい。」

リツの声はうわずっていた。

「あれ…君どこかで見たような気がするんだけど…。」

ユウヤが,きらきらした澄んだ瞳でリツをじっと見つめた。

「あたしインディーズからのファンで、●●スタジオでやってる頃から知ってます。」

「あーっ。そうか!あの時は、演奏しても客がたったの20人とかの時代だったもんねぇ。懐かしいなぁ。どおりで…。」

ユウヤは昔の事を思い出した様で、とても嬉しそうだった。

「きゃぁ。マジで超嬉しい!」

客に暴言を吐かれた話や、大雨で、リツを含めて5人しか客が来なかった時の話などで、2人で盛り上がっていた。

「あっちょっと待っててね。」

ユウヤは部屋の隅の段ボールをごそごそと漁り何かを探しているようだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ