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第20章 奪われたキス

「初めて好きになった人に振られちゃったの。」

…えっ?お前の相手は真啓じゃねーのか?

「告白して振られたの?…真啓くん…だろ?」

華は誰とは言わず、悲しそうな顔をしていた。

「告白…してないけど…好きな人が居るって言われたの。だから、あーあ駄目だぁと思って。」

華は大きなため息をついた。

「初恋…だったのかぁ。多分あれがみんなの言う初恋だ。苦しくて胸がギュッとなって…今までずっと一緒に居たのに自分でこの気持ちに気が付かなかったの。あたし馬鹿だよね。」

華はバスローブの胸の辺りをギュッと掴んだ。

…どうなってるんだ?こいつら…。真啓が華を振ったのか?

困惑したが、心の隅でホッとした気持ちがあるのを、見つけそれを慌てて振り払うように俺は目を閉じた。

「告白…しなよ。ちゃんと。」

華は真っ暗な中に浮かぶ月を眺めていた。

「まだ振られても居ないのに、諦めちゃうのっておかしく無い?」

…もどかしい。コイツはただの天然じゃなくて、マスター・オブ・天然だろ。

「でも…断られるの判ってるのに、言うのって相手を困らせるだけじゃない?…優しいから、きっととっても気を使ってくれると思うし、そんなんでギクシャクしちゃったら、友達として傍に居られなくなっちゃう。」

華の眼にはうっすらと涙が溜まっていた。大きな眼を見開いて、零れ落ちないように必死に耐えていた。

「友達じゃ無くなるの…が嫌…なの。だから、諦めようと思う。うん。あたし頑張って諦めるっ!!」

それはまるで自分に言い聞かせているように見えた。バスローブの袖でそっと涙を拭く華は頼りなくて壊れてしまいそうな気がした。それは学校での俺には見せたことが無い華の姿。淡い想いが胸の中に広がった。

俺は華を掻き抱いた。ふわりと香るボディソープの香りに眩暈がしそうだった。華は抵抗もせずに、静かに俺の胸に身体を預けて泣いていた。思っていたよりも、小さくて柔らかで華奢だった。涙で俺のTシャツが濡れるのが判った。

「やっぱり…苦しいね。」

華はありがとうと言って顔をあげた。大きな眼の周りは、涙のビーズで縁取られキラキラと光っていた。

「俺が…傍に居るよ。」

…なんで…こんなに無防備なんだよ。

それはまるでドラマの演出のようにスムーズだった。

俺は指で華の顎をゆっくりとあげ唇にキスをした。

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