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第20章 奪われたキス

僕はピアノを弾き続けて居た。コンクールは近いけれど、やるだけの事はやって来た。最後の夏休みだと思えば、どうしても華と一緒に過ごしたかった。華に好きな人が出来たと言われた時には正直ショックだった。華を恨めしく思ったりもした。だけど、僕は華のことを好きでいようと思った。

…諦めがつくまで好きでいよう。

それが僕が出した結論だった。

「よう♪ 凄ぇな。俺が音大受けた時よりも上手過ぎて悶絶しそうだよ。」

リュウがスタジオの隣にあるピアノルームに来て僕に声を掛けた。

「やっぱさぁ…あるんだよ才能って。人並みに努力すれば、誰だって上手くなるけど、それ以上のことが出来るのは才能だよなって俺思う。」

譜面台から譜面を取り上げ眺めていた。そんな時に偶然ユウヤが入って来た。

「真啓くん…これをちょっと弾いて貰えるかな?」

僕は譜面を渡された。

「新曲か?」

リョウがユウヤに聞いた。

「ああ。昨日の夜突然浮かんできて出来ちゃった。」

その曲は、バラードで片思いの彼に、好きな子が居ることを知って思い悩む切ない女の子の心情が歌われていた。僕はすぐに弾きはじめた。

…胸が詰まった。

その切ない旋律と歌詞が良く合っていて、思わず涙が浮かんできた。

「お…おい。」

リュウが慌てて僕に声を掛けた。

「とっても素敵な曲で…感動しました。やはりプロの皆さんって凄いですね。僕が置かれている状況にぴったりなんで感情移入しちゃって…すみません。」

僕は慌てて涙を拭いた。

「これだけ弾ければ、どんな女の子にもモテモテだろ?真啓カッコいいしさ。」

リョウが僕を慰めてくれたが、余りにも大雑把な励まし方だったので思わず笑ってしまった。

「ありがとうございます。」

僕はもう一度弾いた。

「これ何ヶ所か、間違ってませんか?それともこれで良いのかな。」

些細な場所だけれど気になったところを何度か弾いた。

「あ…最初のバージョンだ。ちょっと待って。」

ユウヤは、譜面をその場で書き直している途中で。華が部屋に入って来た。

「静かにしてるから、聴いてても良いですか?」

「勿論だよ。」

リョウが即答した。

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