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第26章 キスの続き

「来週デートする。」

…俺はなんでこんなにイライラしているんだ?真啓に対して?

「お願いだから目立たないようにして下さいよ。親御さんにも迷惑が掛かりますし、お前の年齢詐称がばれたりしたら困る。」

「ああ。判ってるよ。そうなったら学校でも大騒ぎだ。退学だろうな。ざまあみろ親父。」

黒田はがっくりと肩を落として椅子に腰かけた。

「ここ最近次から次に問題が発生して事務所からもきつく言われているんです。」

「リュウのことだろ?あいつは馬鹿だから仕方が無い。俺はいつでも解散して良いんだぜ?解散して困るのはアイツらだろ?」

「お前…最近投げやりになってない?」

黒田はわざとらしく大きなため息をついた。

「俺は前からこんな感じだけど?」

大きなホールじゃなくったって歌さえ歌えればどこだって良い。ユウヤとして生きること、歌いたくない歌を歌わされることに疲れている時に俺は華に会った。傍に居るだけで充分だと思った。諦めるとかでは無く、本当にそれで充分だった。からかったり、怒らせたり眺めているだけで、楽しかったし癒された。

…そうだ。アイツの飾らないところに癒されていたんだ。そしていつの間にか惹かれていた。

「事務所でもお前たちは稼ぎ頭なんだ。それを忘れないようにしてくれよ。」

インディーズの時に無名の俺たちを拾い上げてくれたのが黒田だった。役員たちを押し切って俺たちをデビューさせてくれた。

「黒田さんへの恩は忘れてないよ。」

名前が知られるたびに、ライブをする“箱”がデカくなるたびに、身動きが取れなくなって息苦しさを感じ始めていた。それは俺だけでは無く、他のメンバーだって同じだった。好きなことをしている筈なのに、苦しさと責任だけが増していった。

「とにかくマスコミには気を付けるんだ。」



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