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「真啓さん？久しぶりに一緒に御食事をしない？ピアノのレッスンの後、お迎えに行くわね。お母様には伝えて置きますから。」

僕は突然、おばあさまに呼び出された。年明けに海外のコンクールが迫っていた。レッスンの帰り、おばあさまは既に僕を待っていた。

「今日は、会って欲しい方が居るの。」

おばあさまは優しく微笑んだ。おばあさまと母には確執があった。おばあさまは女手一つで、母と母の妹を育て上げた。お嬢様育ちで躾が厳しく、それが嫌で、母は若い頃家を飛び出したと聞いた。連れて行かれた場所は、隠れ家的な小さなフレンチレストラン。

「もう来ていらっしゃると思うわ。」

おばあさまは静かにレストランへと入った。綺麗な庭が見える窓側の席だった。

「お待たせして済みません。」

見ると恩田教授と、美咲が座っていた。

「いえいえ。真啓くんもレッスンで忙しいでしょうから。」

恩田教授が笑った。

「先日は、コンクールにお越しいただいてありがとうございました。」

僕は丁寧に頭を下げ、そして今日も学校で会ったばかりの美咲にもこんばんはと挨拶をした。

「真啓くんは、留学の準備はし始めたかね？美咲が君と一緒に行くのを今からとても楽しみにしていてね。」

美咲は恥ずかしそうに俯いた。