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第27章 健全なお付き合い

「今は、アパートメントを探して貰っているところですの。学院から近くて生活に便利なところをと思いまして。」

おばあさまがメニューを見ながら言った。

…お母様から色々聞いてるのかな?

母よりも僕と祖母の方が最近は良く会っていた。

「そうですか。」

恩田教授は僕にもメニューを渡しながら、僕たちは先に頼みましたからと言った。教授はいつもにも増して機嫌が良かった。

「あら。私のアパートの近くにすれば良いじゃない。そうしたら食事を一緒に作ったり、学校へ通うのも便利でしょう?」

美咲が嬉しそうに言った。

「ええ…でも恩田さんにはこれ以上ご迷惑はかけられませんので。」

僕は丁寧に断った。今は留学のことよりも、華に別れを一方的に告げられてしまったことの方が気になっていた。原因は、コンクールやレッスンでなかなか会う暇も無く、メールのやりとりも出来なかったからだと思う。

「相変わらず真啓くんは、真面目ですね。」

恩田教授は笑った。

「ねっ。伏見くん。そうしましょうよ♪私も初めての留学で心細いし、ひとりじゃ不安だわ。」

美咲は椅子から身を乗り出して言った。

「こらこら美咲。余り真啓くんを困らせるんじゃないよ?」

祖母がそれを聞いて笑った。

「真啓くんはピアノの勉強をしに行くんだからね?お前だって、声楽の勉強があるだろう?向こうに行ったら、心細いなんて言ってる暇は無いと思うよ。」

恩田教授がはしゃぎすぎている美咲を窘めた。

「そうですね。本格的に留学する前の短期留学ですから、生活に慣れないといけないでしょうしゆっくりする暇もなさそうですね。」

僕が当たり障りのない返事をすると美咲は残念そうな顔をした。パーティの時の華が走り去る後姿が忘れられなかった。原因を聞きだすことも出来ず、僕は、ひとりあの日から取り残されたままだった。

食事が来て他愛も無い話をすると,僕は一人で先に家へと帰った。

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