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第28章 ライバル宣言

「僕…知らない…けど…。」

「そんなぁ恥ずかしいからってとぼけなくたって良いって!今時この年で婚約とか流石、未来のピアニスト伏見だよなぁ。」

そんな根も葉もない噂。僕は美咲に確認しようと思った。

「親公認で恩田とやり放題って事じゃん?」

僕はそんなことを聞いて吐き気を催しそうだった。誰がそんなでたらめを流しているんだ?

…こんなことが華に知れたら。

僕は昼休みにやってきた美咲に聞いた。

「ねぇ…君と僕が婚約してるって噂を流しているのは君?」

美咲は恥ずかしそうな顔をして微笑んだ。

「噂って…この間、伏見くんのおばあさまとそう話をしたじゃない。」

…えっ。

「ごめん。僕はそんな話全く聞いて居ないんだけど?それって君が知ったのはいつの話?」

美咲はとても驚いた顔をしていた。

「いつ…って…お父様からお話を聞いたのは、丁度アジア大会のコンクール前だったと思うけど。」

僕はそれを聞いてハッとした。

「その事って、は…今泉さんに話した?」

「え…ええ。丁度コンクールのパーティーで、同じ教室の人に聞かれたから、婚約したけど内緒にしておいてねって…あっ…。」

僕は駆けだしていた。

…華を…華を探さなくっちゃ。

「今泉?なんか用事で職員室に行ったみたいだけど?」

華のクラスに行くとクラスメートがそう教えてくれた。

空が僕の事をじっと見ていたが、すぐに目を逸らし、リツちゃんと話を始めた。リツちゃんもこちらを見たけれどその顔には笑顔が無かった。

…僕以外の皆は知ってたんだ。

これでやっと判った。華のあの時の、どうぞお幸せにって言葉の意味を。僕は職員室へと向かったけれど、結局見つからず、お昼休みが終わってしまった。一刻も早く華の誤解を解きたかった。結局下校時間に華の教室へ向かったけれど、華は既に居なかった。

…早く誤解を解かなくっちゃ。

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