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第28章 ライバル宣言

「あらどうしたの?こんな突然…華は…出かけていていないんだけど。」

トーコさんがリビングへ案内してくれた。華のお父さんが居て挨拶をした。

「僕は謝らなければならないことがあります。」

僕が深刻な顔をしているので、華のお父さんも椅子に座った。

「僕が知らない所で、僕は同級生と婚約させられました。」

トーコさんは思わず自分の口に手を当てて驚き、華のお父さんと顔を見合わせた。

「祖母が勝手に決めたことで、僕の両親は何も知りません。華ちゃんはその噂を聞いて身を引いたんだと思います。」

ホッとしたのは、華が僕のことを嫌いになった訳ではなかったことだ。

「真啓さんのおばあさまが勝手に?」

「はい。母が幼い時にも同じようなことがあったそうです。」

「まぁ。」

「僕が知らなかったこととは言え、華ちゃんを傷つけたことをお詫びしたくて。本当に申し訳ありません。」

僕は頭をさげた。

「僕もコンクールで忙しくて学校を休んだりしていたので、祖母の企みに気が付くのが遅くなってしまいました。」

「まぁそうだったの。でも…。」

トーコさんは、とても困ったような顔をしていた。

「実は…華は別の方とお付き合いをし始めていて…どうしましょう。」

僕はとても苦しかった。

…やっぱり本当だったんだ。相手は空くんだ。

先ほど迄とは違う悲しみがこみ上げて来た。

「真啓さんとお別れしてだいぶ落ち込んでいたのよ。」

華がどんなにこのことで苦しんだか。しかも何も文句も怒ることもせずに僕から離れた。僕のことを思ってのことだろうけれど、祖母を激しく恨んだ。

「婚約者はどうするんだい?」

華のお父さんが心配そうに聞いた。

「僕は…それが解決しないのであれば、ピアノを辞めます。僕は華ちゃんが好きです。大好きですだから…。」

我慢しようと思っても涙が零れて来た。

「そうか。事情は分かったよ。華ちゃんにも伝えておくよ。」

僕は慌てて涙を洋服の袖で拭うと、席を立ち本当に済みませんでしたと頭をさげた。

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