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第1章 可愛い拾い物

「パパ…あたしネコ飼いたい。」

あたしにはふたりのパパが居る。ママはふたりを同時に好きになって、ふたりと内縁関係を続けていた。

「華ちゃんがちゃんと面倒みられるのなら僕は良いと思いますよ。」

パパはダイニングで新聞を読んでいた。脳外科医で、いつも帰りが遅くなるけど、とっても優しくて大好き。

「駄目よ…この間だって縁日の金魚。死なせちゃったじゃない。」

ママが夕食の支度をしながらキッチンから顔を出した。
「だって、夏(カイ)さんがご飯あげすぎたんだもん。」

夏(カイ)は、あたしの異父二卵性双生児の弟。夏はママこと月性 冬(げっしょう とうこ)と、パパこと小鳥遊 学(たかなし がく)の子。夏はパパに似てとっても背が高い。パパはママよりだいぶ歳が上。

「二人で毎日世話をしなくちゃいけないんだよ?」

ダディが医学書を読みながらリビングから言った。このダディこと今泉 静(いまいずみ しず)が、あたしのバイオロジカルなお父さん。とってもダンディで、スーパーかっこいい麻酔科医だ。一緒に歩いていると、大抵の女性は、パパを見つめる。

あたしたちが生まれる前から、ママとパパとダディの不思議な関係は続いている。

どうしてうちにはお父さんが2人で、お母さんがひとりなの?と聞くと、ママはいつもあたしに、”It's complicated.”なのだと言う。あたしと夏とは半分血が繋がっている。

「突然そんなことを聞くなんて華ちゃんはどうしたんだい?」

パパは、目を細めてあたしをみた。

「ママがさっき白い猫を轢きそうになったの。その子とっても綺麗で人懐っこいネコだったの。」

あたしはセーラー服のまま、パパの隣に座った。

「綺麗なネコならきっと外飼いのネコでしょう。飼い主さんがきっといますよ。」

パパは誰に対しても丁寧語で話す。

…可愛かったのに。

あたしは口を尖らせた。

「もうご飯出来るから、早く制服着替えていらっしゃい。」

ママがあたしをせかした。

――― ガチャン。

「ただいまぁ。」

…あ。夏が返ってきた。

夏はパパに似て、背が高くてカッコいい。学校でもモテる。一緒に宿題をしたり、あたしたちは仲が良い。

「あっ。」

あたしは大きな声を出した。

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