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第28章 ライバル宣言

「華…ちょっと話せる?」

真啓があたしのクラスへやって来た。昇降口の近くのベンチにあたしは呼び出された。

「本当にごめん。自分のことなのに僕知らなかったんだ。」

真啓の声は優しかった。

「う…ん。」

真啓の顔が見れない。

「華を傷つけて本当にゴメン。噂通り、婚約は解消したよ。」

長い沈黙。

「クラスメートが華に告白して振られたって聞いて、僕は正直言ってホッとしたんだ。」

「ちゃんと…真啓に確認すれば良かった。婚約の事…でも怖かったの。答えを聞く前に真啓から離れようと思ったの。」

…胸が痛い。

「僕も同じだ。華が僕から離れる理由が怖くて聞けなかった。」

…すれ違い。

「僕はずっと華が好きだよ。」

あたしは膝の上に乗せた自分の手が震えるのが判ったけれど、隠せなかった。

「あ…あたし…今…付き合っている人が…居るの。」

ユウヤの事が少しづつ好きになっている。自分でも良く判ってる。あたしは不器用だ。こんな時に何て言えば良いのか判らない。

「そう…判ったよ。」

…ごめんね。真啓。

「でもね…それでも僕は、華が好きだ。」

真啓はあたしのことを澄んだ目でじっと見ている。あたしは自分の手から視線を外すことが怖かった。

「う…ん。」

「これからは、前みたいな友達に戻ろう。」

…そんなこと出来る筈が無いよ。

「真啓…ごめん。真啓は平気でもあたしは前みたいな友達には戻れないよ。」

…あたしは真啓みたいに真っすぐでいられない。

「教室に戻るね。」

あたしはベンチから立ち上がり教室へと戻った。


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