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第33章 助っ人

あたしは空がいつも居ない時間だったけれど、マンションへと向かった。

鍵を開けると、女性物の靴があった。玄関のドアが閉まる音が聞こえたようで、空がやっていた。

「よう。」

「誰かお客さん?」

あたしは靴を脱ぎながら空に聞いた。

「うん。曲作ってた。」

リビングへ行き、あたしは驚いた。

「今度Rinと曲を作ることになったんだ。」

テレビで見るより細いRinがこんにちはと笑った。

「あ…Rin紹介するよ。僕の彼女の華だ。」

一瞬Rinが驚いた顔をした。

「そうですか…初めましてRinです。」

優しい笑顔であたしに微笑んだ。

「こんにちは。あ…仕事中だったら、あたし帰るよ。邪魔しちゃ悪いし…。」

テーブルの上には何枚かの詞と、楽譜が散らばっていた。ソファの横にはRinのアコースティック・ギターが置いてあった。

「いいよ…俺の机使って勉強してて。終わったら飯でも食いに行こう。」

空は半ば強引にあたしを部屋に留まらせた。

「う…うん。判った。」

ギターの音とふたりが歌う声が聞こえて来た。

…あたしこのまま居て良かったのかな?

「ねぇ…お仕事中なら、また来るよ。」

あたしは玄関で靴を履いて空に声を掛けた。

「えっ…帰るの?」

空が慌ててやって来た。

「うん。だって集中出来ないだろうし、焦らせるのも嫌だから。」

あたしが玄関を出て行こうとすると、空がぐいっと腕を引っ張り、抱きしめてからキスをした。

「後で電話するよ。」

空のいつもの優しいキスだった。

「うん…じゃぁね。」

仕事だって判っているけれど、仲の良いお似合いの二人を見ていると、もやもやとした気分になった。

あたしはトボトボと家に戻った。

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