一途とは
第4章 ごめん。
なるべく、私の遅刻の話は出さないようにして…
「山口t、朝から授業入ってるんだもんね…もう、大丈夫?」
心配そうに言うと
「もう、死にそうですよ」
ちょっと笑い、目を見開いて言った
「昨日も10時まで塾で11時に帰って…
それから色々調べて2時に寝て
今日の朝起きて、階段上がってる途中に目眩して、落ちて足ぶつけて」
ぽんぽんと足を叩く仕草をして笑ってみせた
笑ってんじゃないよ…
「…何してんの
ちゃんと食べて、ちゃんと寝ようよ…」
笑っていた
「ねぇ…死ぬよ?…」
「死にませんよ」
「いや、死ぬって」
山口tは、また、笑ってごまかしてた
授業をやりながら、話は進み
いつのまにか、二人で身内のことや、あまり人には言いにくい話をばんばん言っていた
いつもそうだった
いつも、自然に言い合える
一緒にいて気を遣うこともなく楽で
二人で本心を言い合える
そんな仲だった
「山口tのお兄さんはどうしてんの?」
山口tにはお兄さんがいる。
日本トップの大学を首席で卒業したという
今では世界を走り回ってる重役を担っているらしい
「兄ちゃん?
うーん、世界の犯罪者になりそう」
思いもよらない返事にえ?という言葉しか出ない
笑って言ってるが
「色々大変そうだよ」
投げ捨てるように言った
「でも、兄ちゃんとは何にも話さないし、全然あの人の考えてること分かんないけど
どっかで繋がってるんだろうね
なんか、言わなくても分かるみたいなことあるんだよね」
一人っ子の私には分からない
いや、もしかしたら
この兄弟だからこそ分かりあえることなのかもしれない
兄弟ってどんなんだろう
とても私には見当がつかなかった。