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第10章 忘れていた『約束』《倉田side》

すると、何故か苛立ったような顔で起き上がると

「もう…そういうのはいいから」

その途端、手を引っ張られた。

「え…」

軽い衝撃と共に。

気付いたら、ベッドに倒れ込んでいて、それと同時に、柔らかいフローラルの香りに包まれた。

慌てて起き上がろうと手を付くと、背中に手を回されて、力強く抱き締められる。

こんな風に有無を言わさず抱きつかれたのは初めてで、思わず動きが止まってしまう。

「抱き枕。寝るまででいいから」

そんな事を言いながら、胸に頭を押し付けられた。

甘えられるのは、正直嬉しい。

最近はこんなに近くにいられる事も少なくて…

シャンプーかスタイリング剤のフローラルの香りさえも、この人を感じて愛おしい。

抱き枕、ね。

仕方ないな。

アンタが寝付くまで、側にいてやるよ。

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