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sugar-holic2

第10章 忘れていた『約束』《倉田side》

窓の外は夜の帳が落ち始めていて、うっすらと窓に姿が映り込んでいた。

…何でそんな、遠い目をしてるんだよ!?

「私たち、合わないよね」

静かに突き付けられた言葉に、頭が真っ白になる。

「…は?」

何も言葉が浮かばなくて、聞き返すにもたった一言しか言えない。

明らかに戸惑っている俺に、くるりと半回転して笑顔を見せると

「無理してるでしょ?」

そう訊ねる唇が、微かに震えていた。

「そんな事ない」

少し思い当たる部分はある。

だけど、だからって…

「気まずい思いしてまで一緒にいなきゃいけないの?」

ぐさりと胸に突き刺さった。

そんな思いをさせていたのか?

すると、部屋の外で物音がして

「あ、来たみたい」

来た?

その方向を向くと、戸が開いて

「どうも」

細身で茶髪の、二十歳そこそこの男が現れた。

前髪が長く垂れていて、目元を隠しているせいか、表情が掴めない。

「帰るから。ゆっくり寝ていって」

そう言って俺をベッドに押し倒して、そいつの元へ向かっていき…

「さよなら」

扉の締まる音を、俺は茫然として聞いていた…。

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