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第17章 大野智という男。



突然訪ねてきた俺に少しだけ驚いた大野さんは、何も聞かず家にあげてくれた。


まぁ、聞きたいとは思ってるんだろうけど。
聞き方を知らないんだろうね、この人の場合。


優しいから。
色々聞く前に受け入れちゃうんだ。


今も、勝手にソファに座った俺に「飲むか?」なんて声かけて。
俺だったら、何があったんだよって問い詰めちゃうと思うけど。


冷蔵庫を開けたのに、何も出さずキッチンをゴソゴソしだした大野さん。
ビール切れてたのかな?




・・・・・ワイン?


鍋でワインを温めている姿に、今年1番ってくらい驚いた。
ホットワインなんか飲むの?!


驚いている俺をチラリと見ただけで、大した事なさそうに初めて作る、と言う大野さん。


・・・俺に気を遣ってくれたんだ。


ホットワインを渡されると、手が温まって気持ち良い。
自分で思っていた以上に体は冷えていたみたいだ。
一口飲んだら、じんわりと体もポカポカしてくる。


・・・美味しい。
ちょっとオレンジ入れすぎだけど。


真剣な顔で、迷子にでもなったか、なんて言う大野さん。


ふふふ、本当に面白い人。


N「泊めてくれる?
財布もスマホも忘れちゃったんだよね。」


O「え、スマホも?」


N「うん。」


O「早く言え。」


慌ててテーブルの隅に置きっ放しだったスマホをチェックして、大野さんがため息をついた。


N「・・・・・・・・・。」


連絡きてんだろうな、相葉さんから。


O「ケンカしたのか。」


N「・・・相葉さんが浮気したんだもん。」


なんとなく大野さんの目を見れず、ホットワインを見ながら呟いた。



O「・・・そりゃ相葉ちゃんが悪いな。」


N「え?」


てっきり、相葉ちゃんはそんな事しないだろ、とか言われるかと思ってたのに。


N「誤解なんじゃないかとか、言わないの?」


O「え?誤解なの?」


N「いや・・・・・」


香水のニオイがしたし、そもそも女の子を飲み会にわざわざ誘ってたんだし。
帰りだって、ちょっと遅かったし・・・


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