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第10章 波乱。


N「へっ?!」


気が付けば先輩がすぐ近くで俺の顔を覗いていた。


「スマホ見てニヤニヤしちゃって・・・恋人?」


俺をからかうのが好きな先輩は、意地悪そうに笑っている。
ヤバイ、ニヤけてたのは俺の方だったか。


N「ビックリした・・・お疲れ様です。随分早いですね?遅れそうって言ってたのに。」


「ニノくんに早く会いたかったからね、頑張ったんだよ。」


N「ふーん。」


「相変わらず冷たいな!」


N「ふふ、こないだはドタキャンしちゃってごめんなさい。」


良いよ良いよ、と笑ってくれてホッとした。
やっぱずっと気になってはいたんだよね。



先輩が案内してくれたのは、さすがベテラン芸能人といった感じの落ち着いた雰囲気のお店だった。


男2人で居るには少し居心地が悪いくらいオシャレ。


N「今までのお店と全然違うじゃん・・・高そー。」


先輩とは何度か飲んでいるが、いつも大衆居酒屋に近いようなお店だった。
ボソっと呟きながら居心地悪そうな俺を見て、先輩はニコニコ笑っている。


「ニノくん、飲もうか。」


2人で乾杯して、しばらくは仕事の話をした。
料理も酒も美味しいし、芸能界の先輩の話は面白い。



N「そういえば、皆遅いね?」


飲み始めて1時間近くになるが、まだ誰も来ない。
いつの間にか隣に座っている先輩の手が、さっきからたまに俺の太ももに触れるのが何だか気持ち悪いし。


さりげなく距離を開けようとすると、肩に手を回してグッと引き寄せられた。


N「ちょっ・・・」


「みんな来れなくなったみたいだよ。」


N「え?」


思わずバッと顔を上げると、すぐ近くにある先輩の真剣な目。


「可愛い顔して・・・」


さらに近づいてくる先輩の顔。


N「イヤだっ!!」


唇が触れる寸前で先輩を何とか押しのける。


N「何やってんだよ?!」


いま・・・俺にキスしようとした?!

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