ある晴れた冬の日に
第5章 故郷へ
「ここで降りよう」
「はい」
車が止まったのは坂の多い住宅地で、遠くには海が見渡せる。
先生の後をついて行くと、そこは
一軒の"空き家"だった。
大きな白いアーチ型のフェンスはところどころさび付いていたが、どことなく風情が漂う。
それはきっと、門扉の向こうから咲く両脇のバラの木が、引き立て役となっているからであろう。
「素敵なおうちですね…。誰も住んでいないなんてもったいないわ」
「舞尋の家だった」
「えっ」
「何年か前にご家族は引っ越されたそうだ」
「そうだったんですか」
先生にとってここも
舞尋さんを思い出すつらい場所なのに、私を連れてきてくれた。
私は勇気を出して
「こんな事を聞くのは不謹慎かも知れませんが。舞尋さんは…
いくつでなくなられたんですか?」
と核心をつく質問をした。