ある晴れた冬の日に
第9章 好きだから
「萌音大変だよ!今耳にしたんだけどさぁ」
朝、教室の席に着くと未来が寄ってきて言う。
「なになに?」
「三上先生、もう転勤だって」
ズキン…!
「えっ」
それは思いもよらない知らせだった。
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その夜、思いがけず先生から電話があった。
『実は辞令がおりてね』
「知ってます。すごくショックです…」
『僕も辛い。だから最後に、どこかでお茶でもしないかと思って』
私達は日曜日に会う事になった。
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「ケーキがおいしいと評判の店を見つけたから、そこへ行こう」
「私」
「ん?」
「先生のお部屋がいいです」
「っ…だめだよ、それは」
「先生がどんな所に住んでいるのか見てみたいの」
「見なくていい」
「見たい」
「…君なぁ」
先生は困った様子だった。
部屋が見たいなんてほんとは口実で、二人きりになりたかったのだ。
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先生は根負けし自分のアパートに連れて来てくれた。
「ごめん、散らかってるけど」
「おじゃまします」
2Kの部屋は、必要最低限なものしか置いてなかった。
これが先生の暮らし…。
「コーヒーしかないけどいいかな?」
「は、はい」
舞尋さんは先生のことを、こう呼んでいた。