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密猟界

第8章 狩りの時刻

鉤爪が、闇を裂き、青い稲妻が走った─、どろどろに溶けたユノの顔が、両の鉤爪が、肩から崩れていく。
 ヘチの下の濃い闇のなかから、黒いものが不意に飛び出して来た。そのまま、泥人形のような体を引っつかむと、闇の底に沈む─黒い横長のツノが見えた。
 チャンミンはヘチから下りて、石の台座に屈んだ。丸い石のかたちのヘチの脚…手で動かした。 「ユノ」石の隙間から、仰向けで這い出てくる。「助かった。チャンミン」頭の後ろに手を添えると、身を起こす。
 革のTシャツは、引きちぎられて裂けていた。「ユノ」「危機一髪。命拾いした」「泥の固まりを咥えて、逃げていきましたよ」「俺を食おうとして…そんなものを? 悪食だな」チャンミンの肩を支えにして、「無限に広がる大宇宙」天空を指す。
 ふたりの上空を、彗星が紅く針のような尾を引いて掠めて行く。「愛のコスモ・ゾーン」笑って脱いだジャケットを、着せかけてやるチャンミンを見つめた。「俺じゃないって」肩に手をやり、「どうしてわかった?」「─顔だけ、ユノでした」頷くと、顎を撫でた。 その背後に、カシオペアが煌めく。

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