
密猟界
第8章 狩りの時刻
うなだれ、背を丸めて涙ぐみ、ショボショボ歩きながら、ユノのTシャツの端をつかむ。その手を軽く叩きながら、「ノンダン、ノンダン(冗談)」朗らかに云った。廊下の曲がり角、ふたりの後ろに床下から、二体の黒い人影が浮かび上がって、歩き出す。
「蛇に呑まれたって…、さ」「止めてよ、ユノ」「何とかなるよ」「こわい。僕─」従者のように、二体の黒い人影が、後をついて歩く。「ヨナって男は、大きな魚に呑まれても助かった」「えっ、あ…」「聖書の話だ」ぴたりと二体の黒い人影は、歩みを止め、影はボンヤリ薄くなり、ぶるぶる震える揺らめきをした。
「旧約聖書…絵本にもなってる。知ってるよな」「うん …」─肩に手をまわそうとして、「チャンミン?」火傷したように、手を払い除けるユノ。「お前。背中に、真っ黒い影─」チャンミンから身をかわす。「えっ? な、何ですか」立ち止まり、「なんですか、ユノ」「うわ…」「だから? なんなんです」向き直ったチャンミンに、「お前の肩に黒い人影、しがみついてた」「─え、え? 肩…重い気する」「チャンミン、お前もう─ながくないんじゃないか」
「蛇に呑まれたって…、さ」「止めてよ、ユノ」「何とかなるよ」「こわい。僕─」従者のように、二体の黒い人影が、後をついて歩く。「ヨナって男は、大きな魚に呑まれても助かった」「えっ、あ…」「聖書の話だ」ぴたりと二体の黒い人影は、歩みを止め、影はボンヤリ薄くなり、ぶるぶる震える揺らめきをした。
「旧約聖書…絵本にもなってる。知ってるよな」「うん …」─肩に手をまわそうとして、「チャンミン?」火傷したように、手を払い除けるユノ。「お前。背中に、真っ黒い影─」チャンミンから身をかわす。「えっ? な、何ですか」立ち止まり、「なんですか、ユノ」「うわ…」「だから? なんなんです」向き直ったチャンミンに、「お前の肩に黒い人影、しがみついてた」「─え、え? 肩…重い気する」「チャンミン、お前もう─ながくないんじゃないか」
