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密猟界

第8章 狩りの時刻

 衝撃がきた。血まみれた人間の頭─びゅうと風の音。バサバサと翼が枝葉にぶつかる……
 唸り声のようなものを出しながら、ごろごろ、血だらけの首は草むらを、転がる。前の方角から、碧のワンピースが、走り寄ってきた。転がる首を追いかける。目を凝らすと、碧のワンピースには、首がない。うぉぉ…という唸りに混じって、「チャン─ミン」呼び掛けられた、…紛れもない、ユノの声。
 ……「ユ─ノ?」声は転がる首から出ていた。「チャン─ミン」首なしの碧いワンピースが、草むらの首を拾う─横から、黒い影に体当たりされ、ドサリと倒れ、動かなくなった。
 黒い影が、首を拾い上げては、地面に叩きつけ…を、繰り返す。
 チャンミンと呼び掛ける声も、途切れ途切れ、となる…。黒い影のシルエットは円い背、ひょろりとした姿、反った鼻筋─、…黒い影が戦利品のように、もう何も云わぬ首を掲げた─、大きな黒い瞳、かすかに開いた唇、がっちりした鼻梁……(僕─の顔)
 黒い森に、絶叫が、響いた。












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