
密猟界
第8章 狩りの時刻
「…ユノ」─「冗談、よせ」さらに、笑顔になり、「うん…。兄さんたちを思い出したら─、知らせる」「きっと、…だぞ?」無言で頷き、立ち去る。
─建物の玄関ホールから、中庭が見える。高い天井から床までガラス張り、窓枠のように黒い柱が囲み、額縁にも見えた。
ガラスの向こうは額のなかの絵画。絵画のなかを、ユノが通りすぎる。 ……中庭を後にして、小窓の並ぶ廊下の外側に出た。ベンチに掛ける。 廊下の端の部屋に鉄格子の嵌まった窓がひとつ。顔がこちらを向いていた。硝子玉を思わす黒い眼、涎に濡れて開いた唇、萎びて黄ばんだ皮膚、ぼさぼさに伸びた髪は真っ白─、シム・チャンミンだった。
中庭から鼻唄が、聴こえる。顔を向けると、人形を脇に抱いた若い女性が、近寄って来た。
白い清楚なワンピースと水色のリボン、人形と揃いの服装だった。鼻唄が、歌声に変わる。
ユノは顎をひいて立ち、身振りでベンチを示す。
礼も云わずに座った女性は、ふっくらした頬が愛らしい。
歌声は高く澄んだ声になり、乾いた秋の空気によく通る。スタンダードなメロディを、抱かれた人形も聴いているかのよう……
─建物の玄関ホールから、中庭が見える。高い天井から床までガラス張り、窓枠のように黒い柱が囲み、額縁にも見えた。
ガラスの向こうは額のなかの絵画。絵画のなかを、ユノが通りすぎる。 ……中庭を後にして、小窓の並ぶ廊下の外側に出た。ベンチに掛ける。 廊下の端の部屋に鉄格子の嵌まった窓がひとつ。顔がこちらを向いていた。硝子玉を思わす黒い眼、涎に濡れて開いた唇、萎びて黄ばんだ皮膚、ぼさぼさに伸びた髪は真っ白─、シム・チャンミンだった。
中庭から鼻唄が、聴こえる。顔を向けると、人形を脇に抱いた若い女性が、近寄って来た。
白い清楚なワンピースと水色のリボン、人形と揃いの服装だった。鼻唄が、歌声に変わる。
ユノは顎をひいて立ち、身振りでベンチを示す。
礼も云わずに座った女性は、ふっくらした頬が愛らしい。
歌声は高く澄んだ声になり、乾いた秋の空気によく通る。スタンダードなメロディを、抱かれた人形も聴いているかのよう……
