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密猟界

第2章 雨の外へ…

 「…愛していいですか」自分の胸元に擦りつけられる金の髪…。
 その金の髪の毛を、ユノは、おさな子をあやすように撫でた。「相応しい、─場所と、思うんです…」金の髪は、ユノの腰に、降りてゆく。
 「─チャンミン。だから、ここは教会…」「だから?」答えられないユノ─。「…だから愛するのに……相応しい場所ですよね?」声をくぐもらせながらチャンミンは、云った。
 ユノはチャンミンの黄金の髪を、無言のまま、まさぐるだけだった。
 ─荒い息のふたりが無言になって、教会のなかは静まり返る。
 ……教会の長椅子の背もたれは低い。いちどユノは身体を反りかえらすと、黄金の髪を、両手で、抱き締め抱えるように、前屈みになる。その姿はまるで、深い祈りを、全身全霊を挙げて捧げる、信仰の篤い信者のようだ。
 ──黄金の髪は、ユノの両腕のなかに、見えなくなった。
 「ユノ…?」チャンミンの皮膚を撫でてゆく微風のような、声。
 「ん……」昼寝を邪魔された虎の唸りをユノが、放った。
「今度は─僕…を」乱された髪を、掻きあげると、黄金の淡々しい光が辺りに撒き散らされる。




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