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密猟界

第2章 雨の外へ…

 「あぁ? ……」まだ夢から醒めないらしい。その手を取ると、チャンミンは自身の胸に、触れさせた。「─チャン…ミン─?」はだけられた、熱くなっている、なめらかな皮膚の、胸…。
 火傷でもしたかのように、ユノは手を引く。
 「…どうしたんです」訝しげなチャンミンの顔を、ユノは叱られた幼児の目で、見る。チャンミンの不満げな顔にユノは、うなだれる。
 高い高い天井の窓枠を、大あらしの先触れの突風が、揺らし、過ぎて行った。「許して─欲しい…出来ない」その瞬間、チャンミンの淡い花弁色の口唇の端が、捩り上がった。
 「──許して、欲しいんですか?」沈黙のユノに、無感情に言葉が投げかけられた。「昨日、僕に…」うつむくユノ。「許さないって、お前を、─許さないって」強まる語気に、かぶりをユノは、振る。明るい華の色の唇が、咲くように少しひらき、ため息がちいさく零れた。──奇妙な静けさが、二人のいる礼拝堂のひとところに満ちた。   ……それを埋めるようにハリケーンの前の雨粒が、教会の窓を叩きはじめる。チャンミンが、口を固く閉じて、自分の胸の真紅のトレーナーの、赤釦を留めた。「チャンミン」「はい。……」

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