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密猟界

第1章 雨の中,傘のなか。

 「ハァ…。ラテン語─」軽く吐息をついたユノは前を見て、歩きながら、「難しい言葉─よく知ってるね。流石は俺のチャンミン─」「古代ギリシャ語も、絡んでるらしいですよ」「物知りな…頭の良いお前がいるからな、二人だけでも、上手くやって行けそうだ…」チャンミンは照れ笑いを、した。
 いつの間にか、気がつくと霧─細かい霧雨があたりを、…二人の立っている石畳を灰色に塗り潰していた。
それに気付かないまま、二人は傘の中で、話し続ける…。そこは、石畳からまるで、生えたような石造りの家が立ち並び、おもちゃの国…ミニチュアの…箱庭のような感覚を受けるところだった。
 霧雨は、次第次第に降りを増す。
ユノの菫色のコートの肩に、雨の雫は弾ける。
「世界の首都、か…雨だとどこの街も同じように見える」「でもソウルほど綺麗じゃない」素っ気なく云い、顔をプイッと横に向けると、道を逸れて、幅の狭い急勾配の石段を、チャンミンは登りはじめた。
「チャンミン?」ユノも後から石段に、チョコレート色のブーツの爪先を乗せた。

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