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密猟界

第4章 闇の中の謝肉祭(カーニバル)

「クッキング・ワイン、赤なんだね」シチューをひと匙掬い、「白身の魚、…のシチュー。白ワインかと思った」「どちらでもいいんです」ワイングラスに口をつけるユノ、瓶を取り上げるチャンミン。注ごうと傾けたワインボトルの黒い蝙蝠の羽根が、紅いワイン色に染まった。
 「バター味がいいね…」「少し濃いのですか」「良い加減だよ」「バターは僕が味つけました」「そう─やっぱり…、お前の味だよ」「じゃシチュー鍋入れたの…は?」「─教会はいろんなひとが出入りする…ここの家政婦さん、かな…?」そう云って、せっせとシチューを口に入れはじめたユノを、チャンミンは、ワイングラス越しに一瞬じっと見る。
 二人のテーブルから離れたダイニングの隅。杢調のロッキングチェアが、微かに揺れていた。











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