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密猟界

第6章 闇の中の謝肉祭(カーニバル)Ⅱ

 「ユノは女性には紳士。誰にでも優しい、親切で愛想も良い。だから誤解しちゃう女の人もいるんでしょうね」「迷惑なんだ、そういう勘違い」 ユノに頷くとチャンミンは「僕─前に話したかもしれないけど」目をユノに向けて「対等じゃないから。─それが僕イヤなんです」「うん」「男が何でも我慢して。お金とか、時間とか…女性に差し出さなきゃダメで、損するのが当たり前って…変ですよね」「それは俺もおかしい気がする」 「好き嫌い激しいから、それでうんざりしちゃった。わがままですよね、でも嫌気さして…もういいやって思った」「─そうか」「僕すぐ何でも幻滅しちゃう…子どもですよね」「チャンミンは好き嫌いというより、厳しいところある…」
 笑顔になり、「厳しい─ですか? 僕」「うん。男のことは男同士にしか、わからないよ」「そうかも知れません…ね─」 
 チャンミンが立ち上がって、「ユノが眠ってる…」言い終わらぬうちに、ガタッと─ふたりが後ろを見る。試着室のドアがガタガタと…、黒のウェディング・ドレスがドアの隙間から、もがくように外に出ようとしていた。音は激しくなる。蛸の足そっくりに、黒いレースの布地が、動いた。

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