テキストサイズ

密猟界

第6章 闇の中の謝肉祭(カーニバル)Ⅱ

チャンミンがパネルを持ち上げる。凍えて、震えているようなドアに叩きつけた。パネルが、割れ、破片が散らばって、ウェディング・ドレスの黒レースにも引っ掛かった。
 振動は次第に収まり、レースを挟み込んだまま、ドアは沈黙した。
 ユノがチャンミンと並んで、肩に手をまわす。
「呪いでしょうか、呪いのウェディング・ドレス…」「ん? 何で…」チャンミンの肩をさらに抱き寄せ、耳元に、ユノは唇を軽く触れさす。「女の子の─夢でしょう? ウェディングドレス」「そうかなぁ…。超現実的だぜ、女は─結婚にだって、夢見ないね」「僕らがきっと、女性をあれこれ云ったからですよ」「女のうらみつらみ。気持ち悪い。陰湿だ」
 ユノの髪のなかにチャンミンが、高い鼻梁の先を擦りつけるように、埋めながら、「黄金の…髪─長くしてた時のユノ…。金の髪がライオンみたいで…僕憧れてユノの髪見てた…。いいなと思った」「─またそうするよ」唇を、近づける。
 ─煌々とライトの光が落ちてくる、眩しさのなか、チャンミンが静まった試着室のドアを見ながら、「今の…誰かのいたずらでしょうか? …メイク・ルームの床にも香水撒いた跡あるの、見つけたんです」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ