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密猟界

第6章 闇の中の謝肉祭(カーニバル)Ⅱ

「いいよね、海でさ─」「お弁当。…作りますか」「うん。俺が早起きしてやるよ」チャンミンが振りかえって、「ユノお料理できないでしょう?」「キンパぐらいだよ」そう云うと、横を向いた。 
 「チャンミンは、何のパスタ?」「僕はバジリコにします」爽やかな、香りがした。
 「キンパだって海で食べたら、きっと美味しいですよ」ユノが笑い声をたてる。
 「ま…そういうことだ」「そろそろ、出来ますよ?」チャンミンが皿を並べた。「うん─、本のはなしに戻すけど…」ざりっと金属音。「はい」「海で、海岸でお弁当食べてふたりが─」チャンミンがカトラリーを並べ、「ふたり、が…?」「毛布にくるまって、抱きあう」耳元が、紅るんだ。唇をユノは綻ばす。
 「ロマンチックですね」「カモメが飛んできて─近くの岩場に止まって、ふたりを眺めるんだ」「見られちゃうんですね。照れますね」「ふたりも恥ずかしがる。夢中になってるんだけどね」「─可愛い…です」「うん。心と股間があたたかくなる…良い本。愛読書なんだ」「ユノらしいですよ」チャンミンが、パスタの皿と温野菜の小さなサラダボールを、白いマットの上に置く。

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